甚五右ヱ門芋(じんごえもんいも) 山形県最上郡真室川町

山形県内陸部の最北端の豊かな大地に息づく甚五右ヱ門芋。粘土質の土壌でしか美味しく育たないという不思議な特徴がある里芋です。北、西、東の3方を山に囲まれ美しい山々が連なる豊かな自然が残る真室川町。最上川の支流、山形県北部を流れる鮭川沿いにある畑を訪れました。

550年の歴史

甚五右ヱ門芋はとても粘り気が強く、里芋とは思えない舌触りの滑らかさ、その食感は他に類をみないほどで、口の中でとろっと溶けてしまいます。

「親芋まわりについている子芋、その先についている孫芋、甚五右ヱ門芋は子芋、孫芋だけでなく親芋も食べることが出来るのですよ」と話してくれたのは、この甚五右ヱ門芋を栽培する佐藤春樹さんです。甚五右ヱ門芋は室町の後期頃から、なんと550年以上前から育てられてきたという長い歴史をもつ里芋で、佐藤春樹さんは佐藤家の20代目に当たります。

一子相伝、幻の里芋

甚五右ヱ門芋は在来品種で、粘土質の大谷地と言うこの土地でしか育たない里芋です。かつて地域の人も栽培していた時代もあったとのことですが、収量が少なく、この土地以外ではなかなか上手に育てることが出来なかったため、やがて佐藤家以外では栽培されなくなり、種芋の冬越し方法は門外不出、室町時代から品種改良されることなく、佐藤家に一子相伝で伝わる幻の里芋なのです。

550年もの間、代々大切に受け継いできた「甚五右ヱ門芋」ですが、前述のように地域の人も栽培していた頃もありましたが、だんだん生産が減少していき、やがて春樹さんの祖父、佐藤信栄(のぶよし)さんただ1軒になってしまいました。信栄さん、妻の清子さんも家族と親戚が食べる分だけと、毎年20株ほどの甚五右ヱ門芋を栽培されてきました。2009年、当時サラリーマンをされていた春樹さんが甚五右ヱ門芋の味に魅かれ、「こんなに美味しい芋を家族だけの分の栽培で終わらせるのはもったいない」ということで専業農家に転身されました。「甚五右ヱ門芋」という名前は、春樹さんがご先祖様のお名前から甚五右ヱ門芋と屋号を付け、世の中へ送り出しました。

一口食べると里芋の概念が変わる

甚五右ヱ門芋の皮は薄く、肉質は緻密で柔らかいのですが煮崩れしません。一般的な里芋とは大きく食感が異なります。芋煮、唐揚げ、コロッケ、サラダ、グラタン、どのように調理しても美味しいのですが、最もおいしい食べ方は「衣かつぎ」です。皮ごと蒸し、手でつるりと皮をむき、そのまま食べると甚五右ヱ門芋のもつ甘みと食感を最大限感じることが出来ます。形も丸っこい一般的な里芋と異なり、細い形をしているため、六方むきにはしません。また、一般的な里芋の特徴の1つである皮と果肉の間にあるヌメヌメが少ないのも特徴です。

皮をむくと緑色のものが

一般的な里芋の場合、緑色になったものは「緑化」といい、子芋が地上や地上近くに出ることで日光に当たり葉緑体が出来、形や品質が悪くなることがあります。食べることはできるのですが、避けられる傾向にあります。が、甚五右ヱ門芋の場合、緑色のものは特に食感が滑らかで美味しい芋です。緑色のものに巡り合ったときはラッキーです。

最上伝承野菜

山形県北東部に位置する最上地域は、昭和20年以前から栽培され、現在も自家採種などされて栽培されている野菜・豆類のことを「最上伝承野菜」と名づけ、振興に取り組んでいます。甚五右ヱ門芋の他、勘次郎胡瓜(かんじろうきゅうり)、畑(はた)なすなどがあります。

担当バイヤーおすすめポイント

口の中でふわっと感じ、溶けるようになくなる食感は、飲み込むのがもったいと感じるほど。舌触りの滑らかさは里芋であることを忘れさせるかのよう。サン・フレッシュグループでは2023年から販売を開始、一度購入されたお客様のリピート率がとても高い野菜の1つとなっています。