だだちゃ豆  山形県鶴岡市白山(しらやま)

風土と人が育てる 鶴岡白山(しらやま)のだだちゃ豆

山と海に囲まれた広大な平野の山形県庄内地区(鶴岡市)で収穫されるだだちゃ豆は、うまみと甘みがあり、香りの高さが特徴です。中でも、白山(しらやま)地区で作られるだだちゃ豆は、枝豆の最高峰「白山だだちゃ豆」として、高い人気があります。その白山地区にあり、1800年頃(江戸時代)から14代に渡りだだちゃ豆を栽培し続けているのが、與惣兵衛(よそべい)の渡部康貴さんです。

與惣兵衛のだだちゃ豆
與惣兵衛14代目 渡部康貴さん

與惣兵衛のだだちゃ豆は、「門外不出」「一子相伝」を頑なに守り、種が交雑しないよう江戸時代から現在まで種を守り継いでいます。現在、種苗会社が開発をしている種は病害に耐性があり、栽培しやすく収量が多いのが特徴。そのため大量生産が可能となり、価格の安定にも繋がるメリットがありますが、與惣兵衛では、江戸時代から白山地区で毎年種取りし、繰り返し栽培してきました。代々続く與惣兵衛は「量」より「質」を求め常に天候、だだちゃ豆と向き合い、その時の状況でどのように栽培方法を工夫するのか、手間ひまを掛け、安定した品質重視のだだちゃ豆を作り続けてきました。

鮮度が命

午前4時から収穫

枝豆の収穫適期は3日程度ととても短いため、日々圃場での観察が大事になってきます。そして収穫時間は周囲はまだ真っ暗な午前4時。圃場で収穫しただだちゃ豆は、圃場からすぐの作業場へ運びます。その後、枝から莢(さや)を外す脱莢、洗浄、選別、袋詰め、出荷作業と続きます。出荷までは鮮度保持のため冷蔵室で保存します。枝豆は鮮度落ちが早いため、とにかく時間との勝負です。

土から収穫し、土に還す

與惣兵衛では堆肥を中心に栽培しているため、枝から莢を外し残った枝や葉、小さすぎて出荷できない莢などは、粉砕機で細かく裁断し、圃場へ還します。土に混ぜ込むことで直接栄養として取り込まれるだけでなく、土壌微生物の活動を活発にすることで水持ちと水はけのよい圃場になります。

だだちゃ豆

特徴は、莢(さや)の表面が茶色のうぶ毛で覆われ、しわが寄り、くびれが深く、ふっくらしています。一般的な枝豆と比較するとやや小ぶりで、サヤに入っている豆の数は2粒のものが多いです。茹でると、とうもろこしのような甘い香りが漂うのもだだちゃ豆の特徴です。

「だだちゃ」とは庄内地方の方言で「お父さん」という意味です。江戸時代に、枝豆好きな庄内藩のお殿様が「今日はどこのだだちゃの作った豆か?」と聞いたのがだだちゃ豆の由来といわれています。

おいしさの秘密

鶴岡市の白山地区の近くに、湯田川温泉(ゆたがわおんせん)があり、湯尻川(ゆじりがわ)が近くを流れています。湯尻川は温泉水を含んでおり、温泉成分を含んだ水が朝もや(霧)となり畑に降り注ぎ、だだちゃ豆を潤すことでより一層おいしくしているとも言われています。

話題のこんなところでも

田んぼに浮かぶホテルとして知られています「SUIDEN TERRASSE(スイデンテラス)」に宿泊されると、與惣兵衛のウェルカムだだちゃ豆が振舞われます。

担当バイヤーおすすめポイント

香りと味がしっかりしています。一言でいうと「濃厚」です。豆そのものが甘いのですが、噛むほどに甘く感じるため、いつもより多く噛んでいます(笑)。飲み込んだ後も風味が口の中に残っていて、その残り香がある中で、さらに次のだだちゃ豆を嚙み始める。異なる風味を同時に味わうことができる、まさに枝豆の王様です。

(左)担当バイヤー長屋