北海道・瀬棚で出会った、じゃがいもの新しい楽しみ方
せたな町「なな実」が育てる、食卓が楽しくなるじゃがいもたち
北海道のじゃがいもと聞くと、十勝や羊蹄山麓を思い浮かべる人が多いかもしれません。けれど、北海道の南西部、日本海に面した道南にも、知る人ぞ知るじゃがいもの産地があります。
そのひとつが、せたな町です。
車で畑の近くまで向かうと、目の前に広がるのは、どこまでも続くような緑の畑。海からの風がやわらかく吹き、遠くには山々が見えます。町を流れる後志利別川の清らかな水、肥沃な大地、比較的温暖な気候。ここには、じゃがいもがのびのび育つ条件がそろっています。
実はせたな周辺は、北海道の中でも早い時期にじゃがいもを出荷できる「早出し産地」としても知られています。歴史ある産地でありながら、まだ全国的には大きく知られていない。だからこそ、訪れてみると「こんなじゃがいもの世界があったのか」と驚かされます。
今回訪ねたのは、せたな町若松地区にある農業生産法人「株式会社なな実」。ここで育てられているじゃがいもは、なんと55品種。じゃがいものイメージが、少し変わるかもしれません。

じゃがいもは、こんなにカラフルで個性的だった
圃場や倉庫で見せていただいたじゃがいもは、見た目からして実にさまざまです。
白くなめらかなもの。赤みを帯びた皮のもの。紫色のもの。切ると中までピンク色のもの。まるで栗やさつまいものようなコクを感じるもの。まるで栗やさつまいものようなコクを感じるもの。
「じゃがいも」とひとことで言っても、品種によって味も食感もまったく違います。ホクホクしてコロッケや粉ふきいもに向くもの。煮崩れしにくく、肉じゃがやカレーに合うもの。しっとりなめらかでポテトサラダにぴったりなもの。色がきれいで、食卓を華やかにしてくれるもの。
「今日はどのじゃがいもで料理しようかな」と選ぶ楽しさがあります。




特に印象的だったのは、なな実のエースともいえる「キタカムイ」。白く美しい果肉で、加熱しても色が変わりにくく、なめらかな食感が魅力です。ポテトサラダにすると、いつもの家庭料理が少し上品な味わいになります。
そして、名前も見た目もインパクト抜群なのが「デストロイヤー」。正式にはグラウンド・ペチカとも呼ばれる品種で、皮の模様がまるで覆面レスラーのマスクのよう。見た目は個性的ですが、食べると栗のような甘みとコクがあり、焼くだけでも十分おいしいじゃがいもです。
さらに、中までピンク色の「ノーザンルビー」は、見た瞬間に料理のイメージが広がります。ポテトサラダに混ぜれば、食卓がぱっと明るくなり、子どもも大人も思わず箸を伸ばしたくなる一皿になります。
「せたなのじゃがいも」を覚えてもらうための挑戦
株式会社なな実を率いる高松利彰さんは、家業を継いだ4代目の農家です。もともとは米づくりが中心でしたが、法人化をきっかけに、せたなの風土を活かしたじゃがいもづくりへと力を入れていきました。とはいえ、最初から順調だったわけではありません。
北海道のじゃがいも産地としては、十勝や羊蹄、そして隣町の今金男しゃくのような有名ブランドがあります。味に自信があっても、「せたなのじゃがいも」と聞いてすぐにイメージしてもらうのは簡単ではありませんでした。そこで高松さんたちが選んだのが、多品種栽培という道です。ただし、55品種を育てるのは、想像以上に手間のかかる仕事です。
品種ごとに育ち方が違い、病気への強さも、収穫のタイミングも、向いている料理も異なります。畑をこまめに見て、ひとつひとつの品種の状態を確認しながら育てていく必要があります。それでも、あえて多品種に挑む理由があります。それは、じゃがいもを「ただの脇役」ではなく、食卓の主役にしたいからです。
カレーや肉じゃがに入っている、いつものじゃがいも。けれど、品種を変えるだけで、同じ料理でも味わいは変わります。ホクホク、しっとり、なめらか、甘い、香ばしい。じゃがいもには、まだまだ知られていない楽しみ方があります。
函館の「じゃがいもFACTORY」で、畑の個性をそのまま届ける


なな実の挑戦は、畑の中だけではありません。函館市五稜郭町には、なな実のじゃがいもを楽しめる直営店「じゃがいもFACTORY produced by NANAMI」があります。ここでは、複数の品種を使ったフライドポテトや、皮付きポテトフライなど、じゃがいもの個性を活かしたメニューを楽しむことができます。
フライドポテトと聞くと、どれも同じように思うかもしれません。でも、品種が違うと、甘みも香りも食感も違います。外はカリッと、中はほくっと。しっとり甘いものもあれば、栗のように濃厚なものもある。
色の違うじゃがいもが一皿に並ぶだけで、食べ比べの楽しさが生まれます。これは、じゃがいもを「選ぶ」「比べる」「話したくなる」食材に変える取り組みでもあります。
畑で育てたじゃがいもを、どうすれば一番おいしく、楽しく届けられるか。なな実の取り組みには、生産者としての誇りと、生活者に近づこうとする工夫が詰まっています。
せたなのじゃがいもは、毎日の料理を少し楽しくする
じゃがいもは、とても身近な野菜です。だからこそ、私たちはつい「じゃがいもなら何でも同じ」と思ってしまいがちです。でも、なな実のじゃがいもに出会うと、その考えが少し変わります。
ポテトサラダには、なめらかなキタカムイ。オーブン焼きには、甘みの強いデストロイヤー。華やかな一皿にしたい日は、ノーザンルビー。カレーや肉じゃがには、煮崩れしにくい品種。コロッケには、ホクホク感のある品種。
品種を知ると、料理が少し楽しくなります。料理が楽しくなると、食卓の会話も増えます。
「このじゃがいも、甘いね」「色がきれいだね」「次はフライにしてみようか」
そんな小さな会話が生まれることも、産地から届くじゃがいもの魅力なのだと思います。


産地で学び、売場で伝える。サン・フレッシュが届けるせたなのじゃがいも
せたな町で育ったなな実のじゃがいもは、2025年からサン・フレッシュグループの各店舗でも販売されています。
店頭に並ぶのは、ただの「じゃがいも」ではありません。ホクホク系、しっとり系、煮崩れしにくいもの、揚げると甘みが引き立つもの、色鮮やかでサラダに映えるもの。品種ごとに個性があり、料理によって向き不向きがあります。
たとえば、ポテトサラダにはなめらかな食感のものを。フライドポテトには、甘みや香ばしさが引き立つものを。肉じゃがやカレーには、煮崩れしにくいものを。見た目を楽しみたい料理には、ピンクや紫のじゃがいもを。じゃがいもを品種で選ぶと、いつもの料理が少し楽しくなります。
「今日はどのじゃがいもで作ろう?」そんな会話が生まれることこそ、なな実のじゃがいもが持つ魅力です。
サン・フレッシュのバイヤーも、毎年この地を訪れています。畑を見て、生産者の話を聞き、品種ごとの特徴や、その年の出来を確かめる。じゃがいもは身近な野菜ですが、知れば知るほど奥が深い食材です。だからこそ、サン・フレッシュでは、産地で学んだことを売場で伝えることを大切にしています。
「この品種はどんな料理に向いているのか」「どう食べると一番おいしいのか」「なぜ、このじゃがいもをおすすめしたいのか」
生産者のこだわりを、売場でお客様にわかりやすく届ける。それが、せたなのじゃがいもを扱ううえで、サン・フレッシュが大切にしている役割です。実際に店舗では、「料理に合わせて選べるのが楽しい」「いつものポテトサラダが違う味になった」「見た目がきれいで子どもが喜んだ」といった声もあり、好評を博しています。
せたなの畑で育った個性豊かなじゃがいもが、サン・フレッシュの店頭を通じて、家庭の食卓へ届く。産地を訪ね、学び、伝えることで、じゃがいもは単なる食材ではなく、選ぶ楽しさのある一品になります。
今日の夕ごはんに、じゃがいも料理を一品。
そんな気分にさせてくれる、せたな町の産地訪問でした。

